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2020.05.20

医薬品のインターネット販売

ドック・モリス通販は、ドイツの国境側近のオランダのヘーレンに本社があるヨーロッパ最大の医薬品ネット通販会社である。
2004年から医薬品通販がドイツで解禁されると、要処方せん医薬品にかかる自己負担金の無料化(オランダは自己負担が無い)や、OTC医薬品2割引、3割引を目玉にして、ドイツ国内市場になぐりこみをかけてきた。
さらに2007年の薬局チェーン解禁にともない、ドイツ各にフランチャイズチェーン薬局を展開している。

2016年10月19日、ドック・モリス通販が申し出た「ネット販売における要処方せん医薬品の値引きの導入」が欧州裁判所で合法と判断された。
ドイツ国内では要処方せん医薬品は値引きを禁止されているので、要処せん医薬品の値引きは、ドイツ国内に拠点をおく医薬品ネット販売だけに認められている。
要処方せん医薬品の通信販売においては、注文はインターネットで可能であるが、購入者は処方せんの原本を郵送で当該薬局に送付しなければならない。
また、薬局でも原本が薬局に到着しない限り調剤できない。
このため、現時点では要処方せん医薬品の通信販売全体に占める割合はごく小さく、通信販売全体の90%以上がOTC医薬品で占められているというのが実態であるが、今後は要処方せん医薬品の通販市場が伸びる可能性もあると言われている。

また、医薬品の通信販売激化の波は薬局だけでなく、大手のドラックストアチェーンにもおよび、2008年には大手ドラックストアチェーンDMがオランダのオンライン薬局Europa Apotheekと提携し、店内にファーマプランクとという注文ステーションを設置し、商品の注文と受け渡しサービスを開始した。そして、ドイツ最大のドラックストアチェーンSchleckerも自らオンライン薬局VITALSANAを開局して、一般販売可能な医薬品や生活用品のオンライン販売網への組み込みを始め、その流れは加速していく事態となった。最近ではスーパーマーケットチェーンやカタログ販売の会社等まで、医薬品の通信販売事業に参入する状況になっており、医薬品の通信販売市場での競争が激しさを増している。
通信販売を許可されている薬局は、国内の全薬局の約1割程度であり、ドイツ全体では医薬品市場規模219億ユーロであるが、このうちネット販売は約3%である。

これらのネット通販の現状に対してドイツ薬剤師連盟(ABDA)は対抗策を構じ、薬局の存在意義をドイツ国民にアピールしている。
たとえば、薬の配達サービスであり、ドイツ薬剤師連盟が運営するサイトに、薬局から発信する情報やサービスをとりまとめた"aponet"というウェブサイトをオープンした。
ABDAは、このサイトの中で、「ホームサービス」と呼ばれる、一般薬局が近くの患者宅まで薬を届けるサービスの提供を紹介している。
患者は"aponet"の画面に郵便番号を入力することで最寄りの「ホームサービス」実施薬局を検索でき、画面上か電話で医薬品を注文、それを取り置きしてもらうか、自宅まで配達してもらうことも出来るという仕組みである。
オンライン薬局と違ってOTC医薬品値引きは無いものの、要処方せん医薬品を注文する場合には、処方せんを郵送する手間がなく、また薬剤師からのアドバイスが配達時に受け取られるというメリットもあり、社会的に評価・認知されつつある。
また、「ハウスケアポーテ」(かかりつけ薬局)をアピールし、患者に身近な医療提供施設であることを認知させる施策に打出た。
患者は薬局に個人データを登録し、かかりつけ薬局を持つことにより、薬局はより細やかな患者情報に基づいた相互作用や医薬品の重複などを管理し、アドバイスを受けられるというもので、今までのドイツの薬局に見られなかったPharmaceutical careの実践を通販の対抗策として始めたのは興味深い状況と言える。

参考文献:「海外の薬事制度にまなぶ・時代に寄り添う薬剤師の未来に向けて」  ~ドイツ~岩崎英毅・城戸真由美

 

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